ビタミンCは生命の本質に関与する分子であり生命を守るために不可欠な分子である。｜福岡市博多区内科・糖尿病内科|山本診療所

 

ビタミンCはビタミンという名前のためその本質が軽くみなされている（ discounted ) と感じています。ビタミンCと言わずアスコルビン酸（ Ascorbic acid, Ascorbate )と表現したほうがより理解が広がる可能性もあります。化学式はC6H8O6で６個の炭素原子、８個の水素原子、そして６個の酸素原子からなる有機化合物です。生命にとって最も重要なエネルギー源すなわち燃料であるブドウ糖( C6H12O6  )から４個の水素原子が放出されることによりビタミンCが合成され、その化学式が類似している点からも生体内でのその化学物質としての重要性を感じることができます。ビタミンCの立体構造は対掌性で分子構造が左右の掌のように実像と鏡像の関係にある異性体（対掌体）を持ち、ビタミンCは左手型のL-アスコルビン酸です。ポーリング博士は、この対掌性が生命の特徴であると述べており、炭水化物、たんぱく質は対掌性であるが、脂肪は対掌性ではないと指摘しています。

ビタミンCは酸化還元反応（ Reduction-Oxidation Reaction:Redox ）に広く関与する分子です。アスコルビン酸( Ascorbate )は１個の電子を活性酸素に与えることによってアスコルビン酸ラジカル( Ascorbyl radical )になり、２個のアスコルビン酸ラジカルが結合してデヒドロアスコルビン酸( Dehydoroascorbate )となります。すなわちアスコルビン酸は２個の電子を与えることによってデヒドロアスコルビン酸となります。幸いアスコルビン酸ラジカルの反応性が低いことがアスコルビン酸の抗酸化力を強力なものにしていると考えられています。

生命とは何か？一つの視点は、ミクロのレベルで考えた「 電子の流れ（ electron flow ) 」であり、健全な生命とは「電子の流れ」が自由で円滑な状態であると表現できるのです。そしてアスコルビン酸はその「電子の流れ」を円滑にするために不可欠な生命の本質に関与する分子です。更に病気はこの「電子の流れ」が妨げられている状態と考えることができます。そして病気を引き起こす病因すなわち毒（ toxin )は外的なもの（ウイルスなど）や内的なものにかかわらず電子を細胞から奪っていきます。しかしアスコルビン酸はその毒に電子を与えることによって毒を不活化して細胞を守ります。すなわちアスコルビン酸はミクロのレベルで言えば、いわゆる「解毒剤 ( antitoxin )」なのです。

また脳はビタミンCの濃度が非常に高い臓器です。すなわち脳の活動にビタミンCが不可欠であるということを示唆しています。高度のビタミンC欠乏である壊血病の時でさえ生体は他の臓器を犠牲にしてでも脳のビタミンC濃度を維持しようと働くと言われています。人間の本質は「思考（ Thought )」であり、健全な思考を生むためにもビタミンCが重要であるとも考えることができます。脳にとって、燃料であるブドウ糖とその誘導体であるアスコルビン酸が必要不可欠ならば、これらは人間にとって正に生命の本質を担う分子であると理解できます。

ライナスポーリング博士が、スペイン風邪のようなインフルエンザ大流行の時生死を分けたのは個々の人のビタミンCの充足状態ではなかったかと推測しています。すなわちビタミンCが欠乏している状態の人々が亡くなられたのではないかと述べておられます。すなわちミクロのレベルで「電子の流れ」が妨げられている状態は感染症にも弱いと仮定でき、ビタミンCの補完により重症化を防げるのではないかという仮説が成立するのです。またビタミンCはマクロのレベルでは「自然免疫」と「獲得免疫」共に増強すると考えられています。新型コロナウイルスに対抗するには抗体などの「獲得免疫」だけでなく白血球、貪食細胞、NK細胞、インターフェロンなどの「自然免疫」の強化が重要であるという見方もあるようです。ビタミンCはこの条件を満たす安全な分子です。

ビタミンCを単なるビタミンとしてではなくアスコルビン酸という生命に不可欠な分子であると理解することによってビタミンCの重要性が納得でき天才的な自然科学者達が解明した恩恵を受けることが可能となります。

 

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