Herbal-Medicine
私は大阪で稀代の名医として知られた山本巌先生の高弟である福冨稔明先生に師事し漢方医学を学びました。
山本巌先生や福冨稔明先生が目指された漢方医学は従来の四診だけによる診断治療ではなく生薬の薬理学的作用に基づき疾患の病態生理に対応した漢方薬を使用するという西洋医学と東洋医学の融合による科学的漢方医学で「第三医学」と呼んでいます。
従来の漢方は解剖学の知識の乏しかった江戸時代の経験的漢方がそのまま現代に引き継がれ「四診(望聞問切)」と呼ばれる五感による原始的な方法のみで「証」を決め処方も決まるというものでした(方証相対)。
しかしながら、それのみでは複雑な病態に対応していくことは困難で科学的ではありません。
すなわち病態を現代医学的に把握し、歴史的経験的知識を生かした漢方医学的な分析を加え、個々の生薬の作用および相互作用を考慮した上で、病態に合った生薬を組み合わせて作るいわば病態分析的漢方医学です。
現代医学の化学薬品のみでは副作用の問題も含めすべての病態に対応することは困難です。
漢方の生薬は薬の宝庫であり、このような科学的アプローチにより様々な病態に対応していくことが可能となります。
これは薬物治療の中でも現代医学の化学薬品療法に対する生薬療法とも分類できる治療法です。
漢方医学独自の病態として「瘀血(おけつ)」があります。
「血が滞る病態」を表し現代医学的にはうっ血や微小循環障害などが考えらえていますが、山本巌先生は「瘀血」を臨床仮説として「駆瘀血剤を使ったら治る病態」と考え、難治性疾患は瘀血であるとみなし駆瘀血剤を投与して治されておりました。
駆瘀血剤は第三医学の究極の処方になります。
また「寒」や「水滞」を現代医学では十分認識されていない漢方医学的病態として捉えています。
「気虚」は機能低下、特に消化吸収機能低下であり「血虚」は栄養不良や老化による物質的不足であり、「気滞」を精神的ストレスだけでなく中空臓器平滑筋の攣縮であると捉えるのも第三医学の特徴です。
「医学に西洋医学も東洋医学もない。病気をよく治すのがよい医学である。西洋医学と東洋医学を合体させてより良い治療を目指さなくてはならない。」
私は山本巌先生のこの教えを肝に銘じ毎日の診療を行っております。
参考文献
山本哲郎、福冨稔明「胸部交感神経遮断術後の代償的発汗に漢方治療が有効であった原発性多汗症の一例」漢方研究 第424号
山本哲郎、福冨稔明「認知症治療の盲点 抑肝散、ビタミン療法、および抗精神病薬中止で改善した血管性認知症の一例」漢方と診療 第2号
山本哲郎「咳嗽を主症状とする副鼻腔炎および難治性副鼻腔炎の漢方治療について」漢方研究 第414号
山本哲郎、福冨稔明「胃苓湯が著効を示した難治性感染性腸炎の5例」第288回日本内科学会九州地方会抄録
山本哲郎、福冨稔明「脳血管障害後遺症に漢方治療が有効であった2症例」第36回日本東洋医学会九州地方会抄録
山本哲郎、福冨稔明「典型的な気虚の症候を示したACTH単独欠損症の一例」漢方研究 第425号
山本哲郎、福冨稔明「Collagenous colitisによる難治性下痢に対して漢方治療が有効であつた一例」漢方と診療 第1巻 第3号
山本哲郎、福冨稔明「突発性難聴罹患後の難治性耳閉感、耳鳴りが漢方治療で改善した一例」第37回日本東洋医学会九州地方会抄録
山本哲郎「伝染性単核症に小柴胡湯加桔梗石膏が有効であった一例」
第40回日本東洋医学会九州支部学術総会抄録
山本哲郎「眩暈のため寝たきり寸前となっていた87歳女性に苓桂朮甘湯が著効した一例」
第45回日本東洋医学会九州支部学術総会抄録